2/21さいたまネクスト・シアター「2012年・蒼白の少年少女たちによる「ハムレット」」を観る
↑さいたま芸術劇場は、改装以降、足を運んだのは初めてなので1年以上のご無沙汰でした
「蒼白の少年少女たちによる~」とは蜷川氏はなんと意地悪なタイトルをつけたことか。
さらに、なんと意地悪なことに、劇中最も盛り上がるところで突如として何の脈絡もなく「こまどり姉妹」がやってくる、こまどり姉妹のオン・ステージになる。
「2012年の蒼白の少年少女たちが演じるハムレットとこまどり姉妹は拮抗しうるのか!?」なんて宣伝文句に書いてあったりする。ひどいなー、と一瞬思いつつ、これは「蒼白の少年少女」を試すわけではなく、蜷川さん自らの演出作品を試すことなんだろうと理解しました。
(40年越しの企み)と書いてありますし。
舞台はさいたま芸術劇場大ホール内のインサイドシアターということで、舞台の上に客席が三方に囲む形で、これは「美しきものの伝説」のときとほぼ同じ。今回、正面席の上段のほうから見ました。(普段はあまり正面こだわらないのですが・・・)。
上演時間3時間40分。密度の濃い時間を堪能しました!
まず全体の企み、完璧に蜷川氏にお手上げです。
とりわけ舞台美術は驚きです!
蜷川氏はハムレット演出7度目。過去の成功エッセンスは生かしつつも、さいたまネクストシアターならではの、思いもつかない舞台を見せてくれました(ネタバレの詳細は後述)
「蒼白の少年少女」の「蒼白」は彼らの世代の戦略であるということを、蜷川氏はご存知なのであろうな、と思いました。
このお芝居「ハムレット」は、世代間格差の問題を問い、旧世代の新世代への恐れを描きながら、世代間理解が可能かを問い、あるいは革命的世代交代が起きるとしたら、という仮想を試みているとも読める、そういう企みをまた感じてしまうのです。
彼らより上の世代はそれを心せねばなりませんと、言いたいのであろうかな、と。そのリトマス試験紙がこまどり姉妹だったと思うのです。
こまどり姉妹ですが、一番ぶっ飛んだのは、ハムレットがオフィーリアに「尼寺へ行け!」と叫ぶ、そのときに登場!したことでした。
では、こまどり姉妹の登場で、川口覚さんのハムレットと、深川美歩さんのオフィーリアは喰われてしまったか、というと、そうではありませんでした。
帰り道、さい芸会員メンバーと見られる熟年(想定60代以上)女性4人組の話し声が聞こえたのですが、「あそこ、すっごく盛り上がっていたのに、興がそがれてしまうわよ、いくら蜷川さんでもねえ・・・」
すなわち、十分、対抗できている、ということですよね。ひとつの絵を破って別の絵が現れるような感覚を得ましたが、ちゃんとハムレットの世界に帰って行きましたから。
深川さんは昨年の「美しきもの~」の伊藤野枝役が印象深いですが、今回は真反対のオフィーリアでありました。
お二人だけではなく、ホレイシオ(松田慎也)もガートルード(熊澤さえか)も名前のある役だけでなく、旅芝居の「黙劇」部分の役者たち(佐々木美奈、周本絵梨香、浅場万矢)もよかったです。
(以下、ネタバレ含む感想は、「続き」にて)
さい芸大ホールインサイドシアターということで、普段舞台となるところにひな壇上の座席3つを持ち込んで、三方囲み舞台で客席から見下ろす感じなのですが、舞台床がガラス張りでその下(奈落)を見通せる仕掛けになっています。ガラスの床の下(奈落)は開演前は楽屋として、役者たちが着替えたり化粧してたりが見えます。
天井からシャンデリアが降りてきて「開演」。その後は、ガラス床の下が2つ目の舞台として機能し、役者たちはガラス床の上と下、2段構造の舞台を走り回ります。で、逆にこのガラスの床とシャンデリア以外の美術はありません。
私が、開演前チラシ等に目を通しているうちに、いつの間にか床下がガラス張りの楽屋になっていることに気づいたときの驚きといったら!そしてお芝居が始まると速やかに第二の舞台になる驚きといったら!素直に凄いって思いました。
このガラスの床と奈落の底、の2重構造の舞台の効果は圧倒的で、
・楽屋を見せることで高まる「お芝居ですよ」雰囲気、
・ガラスの箱の中で演技しているように見え「標本箱」のような印象もある、
・地下、に当たるので、地下=墓場、もう死んでしまったものの物語
・・・そういう何重もの「虚構性」仕掛け作りに成功している
・王、王妃が現れると、それ以外のものは下に下がり、上下関係を見せ付ける。
・あるいは簡単に踏みにじることもできる
・ガラスの箱であることで、王が王国を掌握している
・・・そういう何重もの抑圧感を表現できる
・亡霊は、舞台の下からせりふを言う場面がある、それに対してハムレットが「天晴れモグラ殿」と答える。
・また、オフィーリア埋葬の場面では、文字通り
・・・戯曲に何回も「地下」が描かれている、それをそのまま表現できる
・だいたい、ガラス箱のような王国「デンマーク」だからこそ、ハムレットの「この国の箍(たが)が外れてしまった」のせりふは意味を持つかも
なんて、いろいろ刺激され、とにかく、ガラス張りの舞台と奈落の底、この二重構造の舞台の「企み」に痺れてしまいました。
ハムレットというお芝居自体に戻ると、このお芝居でのハムレットは王子として、公人として、世代の代表として、戦い、悩む存在であると受け取りました。
最期、遺志として「次に王に選ばれるのはフォーテンブラス」という台詞は謎めきますが、自分の世代を含めて旧世代とし、さらに新しい世代に渡す、という意味に受け取りました。
今回の演出では、最後フォーテンブラスは、ホレイシオからハムレットの遺志を聞きながら、ホレイシオ含むデンマーク要人を切り殺してしまいます(これは戯曲ト書きにはありません)。
それを前景にハムレットの遺体を運ぶ(後景へ消え去る)形で終わります。またフォーテンブラスや彼の軍人はパンクロッカーの如くですし。なんでこんなやつに、と思ってしまいそうになりますが(笑)
謎はあるのですが、2回目のチケットも勢いで買ってしまいましたし、それまでにまた戯曲が読めるとよいかな、と思っていますし、次回は上段でなくもっと近くから見たら、あるいは脇から見たらどんな感じかも楽しみです
追伸:今日座った席のすぐ近くに蜷川さんを拝見しました!いえ、こういうの絶対見逃すたちなので少し嬉しい。そういえば「美しきもの〜」を観にいったとき、同じ日に亀治郎さんが来てたらしく(本人ブログ)、その悔しさは忘れない。
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